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■ Pyotr Ilyich Tchaikovsky :: Symphonie Nr.5 e-moll op.64

チャイコフスキー 交響曲第5番 ホ短調 作品64

□ 編成

Fl Ob Cl Fg Hr Trp Trb Tuba
3 2 2 2 4 2 3 1
Timp G.C Cyn Trg Vn Va Vc Cb
1      
Other
Picc : 1
※ PiccはFl3番が持ち替え。
※ ClはすべてA管。
※ HrはすべてF。
※ TrpはすべてA。

□ 構成

第1楽章 Andante - Allegro con anima
第2楽章 Andante cantabile con alcuma licenza
第3楽章 Allegro moderato
第4楽章 Andante maestozo - Allegro vivace

□ 曲について

チャイコフスキー(1840年〜1893年)が1888年に書き下ろした交響曲である。48歳、熟年の入り口に差し掛かりつつある時期だ。その頃の彼と言えば交響曲第4番を世に出してから約10年が経過していたこともあって、「必ず新しい交響曲を完成させてみせるぞ」という意気込みを弟に手紙で書き送っていたほど新しいアイデアに溢れていたようだ。

ロシアの閑静な田舎に住み、比較的恵まれた田園生活の中で生まれた交響曲はとても重厚で重みのあるつくりになっていたりするのだが、次に作られる交響曲第6番「悲愴」と比べると、まだ、というかかなり明るさに満ちあふれている。この頃はまだ希望があったんだな、多分。

この交響曲のキーポイントになるのは、それぞれの楽章で顔を出してくる「運命の動機」。これはベートーベンの「運命」のモチーフよりも明らかに分かりやすい形で明示的に提示されている。彼がどんな風に「運命とは何か」考えていたのかはよく分からないけれども、このモチーフにその答えが隠されていることは確実なのだろう。

第1楽章。のっけから聞こえてくるのはクラリネットが奏でる重くて暗い旋律。そしてポーランド民謡からとったと言われる旋律。それらがあるときは畳み掛けるように、またあるときは緩やかに上下しながら揺さぶってくる。そこから描かれるイメージは厳しい冬の寒さと、ふと思い出される暖かい春の日差し。

第2楽章。どんよりと終わってしまった第1楽章とはうってかわって、第2楽章は荘厳ながらも暖かい和音で始まる。ホルンが泣かせてくれる。最初は小さかった旋律の流れがだんだんと大きなうねりになっていって、無限に広がっていき、やがてTuttiによるこの楽章の主題が提示される。それはまるで豊かな自然を心から喜んでいるような、そんな雰囲気である。途中2回、金管楽器がまるで警告を発するかのように「運命の動機」を吹き鳴らすが、そんなことはまるでおかまいなしとでも言うように、この楽章は緩やかに終わりを告げる。

第3楽章。チャイコフスキーといえば「ワルツの神様」。イタリアの街で聴いた歌をモチーフにして最初は軽やかに、中間部は細かなパッセージでちょこまかちょこまかと動き回り、再び緩やかなワルツへと回帰する。弾き手にとってはかなり厳しい思いをさせられるのだが、聞いている分にはとても軽やかな気持ちにさせてくれるところがミソ。

第4楽章。弦楽器が荘厳に「運命の動機」を弾きやがて木管楽器がその流れを受け継ぐ。金管楽器が高らかにファンファーレを吹き鳴らした直後にティンパニが強い調子で連打して主部に突入する。主部はなんというかスペクタクルの連続で、速いテンポでシーンが変化していく。中間部のファンファーレはまるで、青空へ白い鳩が群れをなして飛び出していくような。その裏でチェロとコントラバスは一心不乱に伴奏を弾きこなしている。この楽章の一番の驚きはフィナーレかも知れない。荘厳な導入部は一瞬平穏なフィナーレを想像させてしまうがところがどっこい、喜劇のような喧噪を経てトランペットの高らかな響きで幕を閉じる。

演奏時間 : 約45分