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■ Camille Saint-Saëns :: Symphonie Nr.3 c-moll op.78 "avec Orgue"

サン=サーンス 交響曲第3番 ハ短調 作品78 「オルガンつき」

□ 編成

Fl Ob Cl Fg Hr Trp Trb Tuba
3 2 2 2 4 3 3 1
Timp G.C Cyn Trg Vn Va Vc Cb
1 1 1 1
Other
Picc : 1, EHr : 1, BCl : 1, CFg : 1, Organ, Pf(連弾)
※ PiccはFl3番が持ち替え。
※ Cl, BClはすべてB管。
※ Hrは1番C-E, 2番C-Es, 3番F, 4番F。
※ Trpは1番F, 2番F, 3番C。

□ 構成

第1楽章 - 第1部 Adagio - Allegro Moderato (序奏のついた自由なソナタ形式)
第1楽章 - 第2部 Poco Adagio (三部形式)
第2楽章 - 第1部 Allegro Moderato (スケルツォ風)
第2楽章 - 第2部 Maestozo - Allegro (序奏のついた自由なソナタ形式)

□ 曲について

サン=サーンス(1835年〜1921年)が放つ名作である。幼少の頃からまるでモーツァルトの再来かのような神童ぶりを発揮し、それでもってフランスの有名どころの教会においてオルガニストとしての重要な職を歴任してきた彼にとって、オルガンをフィーチャーした交響曲を書くというのは半ば使命、もしくは運命だったのかも知れない。

この曲が完成し、初演されたのは1886年。彼が51歳のときだから、中年の円熟味を増しつつある時期である。ロンドンのセント・ジェームス協会から依頼を受けた彼はセント・ジェームスホールで弾いたオルガンの音色にインスピレーションを感じてこの曲を書き始める。ロンドンで大好評だったこの曲が、いまなお人々を魅了する名曲になっているとは思いもよらなかっただろう。

さて、いくらオルガンをフィーチャーしているとはいえ、この交響曲では最初から最後までオルガンが豪華絢爛に響いているわけではない。然るべきところで、非常に印象的な手法で用いられている。やはりヒーローは最初からでしゃばってはいけないのだ。

第1楽章-第1部は弦楽器の刻むシンコペーションと、再現部冒頭で吹き鳴らすトロンボーンが非常に印象的な楽章。取っ掛かりはどこかしら重たく、なんだかフランスの風景というよりは、ちょっと演歌チックなメロディーからして日本海の荒波を思わせる。展開部でちょいと景色は明るくなるのだが、再現部に突入すると再び荒波といった具合である。1楽章-第1部というだけあって、ちょっと含みを持たせながら静かに楽章が終わるのがポイント。

第1楽章-第2部。ここで真打、オルガンが第1回目の登場。しかしでしゃばることなく、まるで幕間からすぅっと入ってくるように序奏を奏ではじめる。さらに木管や弦楽器がオルガンの上にメロディーを乗せ、静寂さと重厚さを兼ね合わせた和音を響かせる。それはまるで、月夜の晩に外に出て、月の光を体いっぱいに浴びているかのような感覚。泣かせるポイントのひとつかもしれない。先ほどの荒波からうってかわって、途中微妙な振幅の変化がありながらも、この楽章はどこまでも穏やかに進んでいく。思わず心和んでしまう逸品である。これにて第1楽章が安息のうちに終了する。

第2楽章-第1部。これまた突然激しめの劇的なスタートを切る。このへんで気づく人もいるかもしれないのだが、この交響曲の大きな特徴のひとつに「循環形式」というものがある。平たく言ってしまえばこれだという主題をいろいろ加工しながら提示していく、いわばサンプリングのようなもの。それがこの楽章でも明確に示されている。激しいとはいえ、第1楽章-第1部よりはずっと明るめのタッチで、中間部に至ってはまるで、軽やかにかつものすごいスピードで踊りを踊るようでもある。しかしそんな踊りの時間はあっという間に過ぎて、再現部以降は少し暗めのタッチに。黒雲が迫ってきたのか?この曲のフィナーレはどうなる?コントラバスが意味ありなメロディを弾いて一旦幕が下りる。

突然閃光のようなオルガンの和音がホールいっぱいに響き渡り、第2楽章-第2部が始まりを告げる。1楽章-第2部での幻想的な登場もいいが、このように劇的に奏でられるのが一番インパクトがある。序奏はどこまでも雄大で幸せ。ピアノが連弾でアルペジオを奏でるところなどはフランツ・リストの影響を受けているというか、細部の随所まで技巧が凝らされているところに脱帽。中間部ではがっちり金管が昔の重い世界に引き寄せようと何度も努力するのだが、そのたびにラッパやら弦楽器やらが総出でそうはさせまいと長調でメロディを奏でるという具合。で、そんな綱引きを一気に決着をつけてしまうきっかけを作るのはやはりオルガン役目であり、Dの和音を起点として一気に短調から長調へと展開する流れは非常に印象的である。荘厳な再現部を一気に駆け抜けてフィナーレへ。ティンパニの連打とともにオルガンの和音は急激にクレッシェンドし、重厚なフランス風交響曲は、興奮冷め遣らぬうちに終了する。

演奏時間 : 約38分