Music Review. Music Trip Architecture Blog

■ Franz Liszt :: "Les Preludes"

リスト 交響詩「前奏曲」

□ 編成

Fl Ob Cl Fg Hr Trp Trb Tuba
3 2 2 2 4 2 2 1
Timp G.C Cyn Trg Vn Va Vc Cb
1 1 1  
Other
Harp : 1, 小太鼓 : 1
※PiccはFl3番持ち替え

□ 曲について

作曲家の世界では「天才」とされる人は数多く存在するけれども、フランツ・リスト(1811〜1886)もまた天才の一人だった。しかもどうもこの男、大層な美男子だったようで当時の女性たちをキャーキャー言わせていたようである。別に作曲とは関係ないんだけれども。

さて、彼がどうして天才と言われていたかといえば彼の作品「超絶技巧練習曲」に見られるような大のピアノ演奏技術の持ち主であったという事と同時に、彼が世の中で初めて「交響詩」なんていうクラシックの1ジャンルを築いた張本人だからだ。そんな彼がリリースした交響詩のなかで一番有名なのがこの「前奏曲(Les Preludes)」である。

さて、この曲のテーマを端的に言ってしまうと「死の世界」。言葉尻だけで捕らえてしまうとなんだかこの曲、おどろおどろしそうな予感がする。が、いざ聴いてみると根暗の明るさだかなんだか知らないけれどもとても明るく、爽やかでさえある。この曲の序文には以下のようなくだりがある。

「われわれの人生は、死によって開かれる未来の国への前奏曲にほかならない。現世は愛によって明けるが苦闘のあらしの中に暮れる。自然の美しさは心に平安を与えるが、ひとたび戦いのラッパが鳴れば人々は必ず戦場に帰るのだ」

うーん、哲学的。なんだか哲学的すぎて良く分からないけれどもリストはそんな考えをこの曲に託したわけである。

最初の1音は弦楽器のピチカートによって奏でられる。これすなわち、心臓の音。つまり、いきなり死を迎えてしまうのである。困ったもんだ。ちょっと無気味で幻想的なフレーズは弦楽器とともに死後の未来の国へと向かう道のりを延々と歩き、やがてその道のりを抜けた先にはトロンボーンが奏でる美しい未来の国の扉が待ち構えている。トロンボーンを中心とした全合奏で奏でられるその世界はなんだか大スペクタクル巨編のはじまりを告げているようである。この全合奏を抜けるとホルンが「愛によって〜」の部分を奏でる。そのメロディはどこまでも甘く。なるほど確かにリストは女性にもてるわけだなと思い知らされる。

だが、そんな甘味な時間がそうは長く続かない。しばし黒雲が上空を覆ったかと思うと、稲光りのようにラッパが戦いの合図を吹き鳴らす。これが「苦悶の嵐〜」。このときばかりは弦楽器も渾身の力を込めてがしがしとメロディやらリズムやらをかき鳴らす。本気で苦悶しているわけである。やがてそんな嵐は通り過ぎ、木管が鳥のさえずりのようなメロディをやり取りする。「自然の美しさは〜」というくだり。クラリネットの牧歌的なメロディが本当に鳥のさえずりのようで美しい部分でもある。

「再び戦場に〜」というくだりはどこに表現されているのかというと、そろそろクライマックスに近付こうかという直前の部分、突如として行進曲風のリズムに遷移するところで表現される。行進曲といえば軍楽隊、軍楽隊といえば進軍ラッパ(すごく無理があるけれども)。やはり金管は戦いの合図を奏でるのが得意である。きっとこの戦いというのは己に対する戦いなのではないかと思う。でなければ格好いいクライマックスまで辿り着けないからだ。負け試合をしていたのでは明るいクライマックスにはめぐりあえない。というわけで華やかなエンディング。再び未来の国の訪れを告げる最初の主題に回帰して、素晴らしい未来への航海を祝っている。ティンパニがなんともかっこいい。こういう場面だけを叩けるのであればいつでもティンパニたたきに志願したくなってしまう。

こうして、華やかさと興奮が覚めやらぬうちに、この曲はフィナーレを迎えるのである。

演奏時間 : 約17分