Music Review. Music Trip Architecture Blog

■ Antonín Dvorak :: Symphonie Nr.7 d-moll op.70

ドヴォルザーク 交響曲第7番 ニ短調 作品70

□ 編成

Fl Ob Cl Fg Hr Trp Trb Tuba
2 2 2 2 4 2 3  
Timp G.C Cyn Trg Vn Va Vc Cb
1      
Other
 
※ ClはB/a-B-A-A。
※ Hrは1番と2番F-F-F-F, 3番と4番D/C-F-D-D。
※ Trpは1番D-F-C-D。

□ 構成

第1楽章 Allegro Maestoso
第2楽章 Poco Adagio
第3楽章 Scherzo - Vivace
第4楽章 Allegro

□ 曲について

「聴こえてくる旋律は確かにドヴォルザークっぽいんだけれども、なんだかドヴォルザークじゃないみたい」

これがこの交響曲を通して聴いたときの初めての印象のような気がする。8番のように軽快さを兼ね備えているわけでなく、また第9番のようにアメリカで得た語法をふんだんに取り入れた、独特の泥臭さを朗々と聴かせてくれている訳でもない。
何というか、全ての楽章にわたってアンニュイな気分が漂っているのだ。ではそのアンニュイさの原因はどこにあるのだろうかと文献をあさってみると、この交響曲が書き下ろされた1885年からさかのぼること2年前の1883年、彼はとある人物の書き上げた交響曲を聴いて強烈な印象を受けている。

「ブラームス 交響曲第3番ヘ長調 作品90」

ベルリンまで出向いて聴いたこの曲がドヴォルザークの作曲魂に火をつけ、これに劣らない交響曲を書かなくてはという、まさに「追いつけ、追い越せ」てきな気分の中で書き上げられたものである。そんなことを反映してか、この交響曲の随所に、ブラームスを意識したような、美しいのだけれども単純に明るくはない旋律の断片がちりばめられている。が、それはブラームスのまね、という訳ではなく、あくまでドヴォルザーク的な「美しき世界」が表現されているのではないかと思う。
そんな名曲であるにもかかわらず、その難しさからプロ・アマ共に演奏される機会はかなり少なく、そしていまいちメジャーではない。その辺りもアンニュイさを強く感じさせられる要因のひとつかも知れない。いや、本当に弾くのが難しいんだ。この曲は。でもそのネアカではない美しさは確実に一目置ける存在なのだ。

第1楽章。チェロの奏でる旋律はどことなく陰鬱で物悲しげである。やがて旋律の中心は高弦からも木管へと受け継がれ、やがて全合奏に発展するが、終始明るくなることなく、なにか奥底に悩みを抱えたまま進んでいく。それでもホルンが作るきっかけによって、まるでほっとしたかのようにつかの間の明るい陽射しが差し込み、楽章の雰囲気はふっと明るくなる。陽射しは風を呼び、草をなびかせ、やがて弦の全合奏で草原を渡るかのような美しい副主題が提示される、かと思いきや舞台暗転。再現部への突入で再び物悲しげな主題が演奏され、アンニュイな気持ちを晴れさせることができないまま楽章は静かに終了する。再現部から終盤にかけて畳み掛けるように叫び声をあげる金管が何気にかっこいい。

第2楽章。大概のドヴォルザークの交響曲がそうであるように、この楽章は非常に安穏とした、そして哀愁間漂うメロディで歌われる。クラリネットを中心とした木管の響きは柔らかく、チェロからヴィオラへの1プルトのみが弾くメロディの受け渡しもとても暖かである。中間部にて例のアンニュイさが表面に出てくるかのように、バイオリンの旋律にあわせて金管が間の手を入れるのが妙に印象的でもある。

第3楽章。スラヴ民族の血を大切にするドヴォルザークらしく、この楽章はチェコの民族舞曲であるフリアントのリズムが取り入れられている。弦のリズムに乗ったファゴットの旋律が流れるようで美しい。木管と弦とが幾度となく入れ替わり、舞曲は徐々に激しさを増しながら中間部に突入。中間部は幾らか速度が緩まり、少しだけ華やいだ空気になってくる。それはまるで流れていく川の波間のようでもある。再現部では再びフリアントに戻り、一瞬ヴィオラが豊かなメロディを歌い上げたかと思うとすぐに激しさを増し、疾走するかのように終盤へと突入してゆく。

第4楽章。チェロ、クラリネット、ホルンで演奏されるその出だしは、まるで魔王が登場するかのように不気味である。不気味さはやがて消え去るが、そのくらい陰は一瞬の間だけ長調に転じても、どこかで暗い影を落としているかのような空気を匂わせている。どうにも8番や9番で見せてくれるような文句なしの明るさが見えてこない、それでも随所にまるでロマンを感じさせてくれるかのような美しい旋律が見え隠れするのがとても印象的。最後は冒険映画の結末を締めくくるかのようなファンファーレで終了する。

演奏時間 : 約38分