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■ Johannes Brahms :: Symphonie Nr.1 c-moll op.68

ブラームス :: 交響曲第1番 ハ短調 作品68

□ 編成

Fl Ob Cl Fg Hr Trp Trb Tuba
2 2 2 2 4 2 3  
Timp G.C Cyn Trg Vn Va Vc Cb
1      
Other
CFg : 1
※ Trbは4楽章のみ。
※ ClはすべてB管。
※ Hrは1番C-E-Es-C, 2番C-E-Es-C, 3番Es-H-E, 4番Es-H-E。
※ Trpは1番C-E-H-C, 2番C-E-H-C。

□ 構成

第1楽章 Un poco sostenuto - Allegro
第2楽章 Andante sostenuto
第3楽章 Un poco Allegretto e grandioso
第4楽章 Adagio piu Andante - Allegro non troppo, ma con brio

□ 曲について

ブラームスはベートーベンやモーツァルト、チャイコフスキーと並んで名前のよく知られている作曲家である。特に「ハンガリー舞曲」なんぞはあれやこれやとCMに取り上げられているから、曲名は知らなくても曲を聴いたとたんに、あぁ、これね。って感じでみんなが思い出すものである。そんなブラームス、意外にも書かれた交響曲の数が4曲と少ないのである。それは彼がものすごく大器晩成型、かつある意味完璧主義者だったからだろう。ベートーベン命だった彼の信条は、「ベートーベン様の交響曲を超えた!! と思える曲ができるまで、僕は交響曲は発表しない」というものであった。実際にこの交響曲第1番が完成するまでには24年の歳月を費やしている。

とはいえ、長い年月をかけただけのことはあってこの作品、とても重厚な逸品に仕上がっている。長期熟成の味がしみ込んでいるといったところか。たまには重厚な音の世界に身をうずめてみるのもいいかもしれない。

第1楽章。いきなり6拍子の全合奏で楽章は始まる。ティンパニはクールに正確なリズムを叩き、メロディの動きは無気味ではないけれども、何だか悲劇的でさえある。提示部へ移行してもお世辞にも明るいとは言いかねる世界は続く。少しだけその流れが緩まるのは中間部、クラリネットの柔らかな響きが引き立つ部分程度か。再現部の直前にあらわれる感傷的な弦の響きも印象的。男のロマンティシズムを、もしかしたらブラームスはここで感じていたのかもしれない。そんなロマンを引きずりながら、最後は長調に転じて終了。その音形は、まるでルール地方辺りの城壁から、青く澄み渡った空を見上げるような感じでもある。

第2楽章。前の楽章がやたら悲愴感ただようものだっただけに、のっけっから安心させられてしまう柔らかい旋律の数々が体を包んでくれる。暖かな陽光を浴びながらのんびりとたたずむような、そんな雰囲気である。んでもって、中間部で感傷的に響くオーボエの旋律を聴きながら、いささかおセンチメンタルな気分になってしまうところも、これまたブラームスなりのロマンティシズムの表れかもしれない。ただし、ここでもロマンティシズムっていうのは、第1楽章に見られたような男の美学ではなく、むしろもっと女性的な感じがする。第3部に入ると同時に聴こえてくる、コンサートマスターによるバイオリンの旋律がこれまた泣かせてくれる。

第3楽章。クラリネットが奏でる最初の主題はものすごく牧歌的。牧歌的な旋律はやっぱりクラリネットに限ると思う。遠くで牛なんか鳴いていたりするような平和な世界、気持ちがいい。清涼感がこの楽章には詰まっている。中間部ではそよそよ吹く風がいくぶん強くなり、周りの木々をざわつかせるのだけれども、それは決して木枯らしのようなざわつきかたではなくて、おお、いい風がきた、というような感じのざわつき方。木管楽器群と弦楽器群の掛け合いにホルンとトランペットが加わり、まるで急ぎ足のように楽章が進んでいく。平和な光景っていうのはやっぱりいいものである。

第4楽章は「ベートーベン 交響曲第5番」と感触の似ている部分がある。序奏では突然苦悩のような重い響きが展開される。そんな苦悩の乱れというのは弦楽器によるピチカートに表現されている。だがしかし、ホルンが闇を引き裂くように凱歌を奏でると共に舞台は一気に明るさを取り戻し、これにトロンボーンのコラールによる彩りを添える。第4楽章のみに参戦する彼等にとって、待ってましたとばかりの見せ場なのである。
そして、この交響曲を決定的に印象づける主題が弦楽器によって奏でられる。この主題、さらっと聴いてみると「ベートーベン 交響曲第9番」の合唱主題に何となく似ていたりする。もちろんブラームスが「第九」を意識したのかそうでないのかは、今となっては分からないのだが、とにかくその重厚で、かつ崇高な響きは聴くものに安定感をもたらしてくれる。この主題を決起として、楽章は快活なフレーズを自由に展開させながら進んでいく。遊び心に満ちているというわけではないのだけれども、音符が自由に飛び回り、リズムが弾け散るという感じ。そしてクライマックス。例のホルンによる凱歌が、再びオルガンのように輝き、荘厳な響きを残しながら終了する。

演奏時間 : 約40分