Music. Music Trip Architecture Blog

■ Ludwig van Beethoven :: Symphonie Nr.5 c-moll op.67

ベートーベン :: 交響曲第5番 ハ短調 作品67 「運命」

□ 編成

Fl Ob Cl Fg Hr Trp Trb Tuba
2 2 2 2 2 2 3  
Timp G.C Cyn Trg Vn Va Vc Cb
1      
Other
Picc : 1, CFg : 1
※ Picc, CFg, Trbは4楽章のみ。
※ ClはすべてB管。
※ Hrは1番Es-C-Es-C, 2番C-C-Es-C。
※ Trpは1番C, 2番C。
※ Trbは1番Alto, 2番Tenor, 3番Bass。

□ 構成

第1楽章 Allegro con brio
第2楽章 Andante con moto
第3楽章 Allegro (Scherzo e Trio)
第4楽章 Allegro (Finale)

□ 曲について

さて、小学校の音楽で取り上げないことはないであろう「運命」。ベートーベン(1770年〜1827年)が弟子に、「運命はこのようにして戸を叩く」なんて言いながらダダダダンッ、てやっちゃったあれである。だけど思うに、冒頭の「ダダダダーンッ」が有名すぎるため、他の楽章の立場がないような気もしてしまう。これが名曲ゆえの悩みなのだろうか?

「運命」と言うからにはかなりドラマチックな展開を予想してしまうかも知れないが、実は案外クールかつお洒落な仕上がりになっているのではないかと思う。あんまり感情的にならずに、クールに運命を捕らえるのがドイツ流なのか?(そんなことはないんだろうけれどもな、多分。)

きっとこれを読んでいる人の頭の中では、小学校の天井近くに張られていたベートーベンの恐い肖像画が浮かんでいるかも知れない。たまには笑っている顔も見てみたいもんだと思いつつ、レビューしてみたいと思う。

第1楽章は例によって「ダダダダーンッ」から始まる。まるで突然決定的な判決を言い渡されたかのように。この主題が全ての楽器から断続的に奏でられることによって、さらに畳み掛けるようにあなたの運命、あなたの運命、というように聴き手に語りかけてくるわけだ。たまったもんじゃない。
どうせ攻めるんならこてんぱんにしてもらいたいものだが、どんよりと暗くならずに終始かっちりとした音の質で奏でられてしまうところがかなりクールで困ったものである。クールな中にも、ちょっと感傷的なオーボエのソロを何気なく添えているところがこの楽章に味を添えている。

第2楽章は第1楽章とうって変わって、どことなくとろんとした出だしで始まる。そのとろとろの出所はヴィオラとチェロ。この楽章の全てに渡ってのんびりしたメロディーを、手を変え品を変え奏で続ける。が、中だるみで終わらないのはさすがベートーベン。要所要所でトランペットがきっちり締めてくれ、その後に雄大な全合奏が現われる。つかの間の休息を楽しんでみようかなといったところか。昼寝でもしてちょっと体力を貯えておこうといったスタンスを連想させるお気楽な楽章。

第3楽章。展開されるのは枯葉舞う並木道のような世界。チェロとコントラバスがやや不気味めな序奏を奏でたかと思うと、ホルンが第1楽章のテーマを鳴らす。運命再び。またこれがあえて感傷的にならない音色で吹いてくれるので余計に見にしみる。もうすぐ季節は冬、寒い。
かと思うと中間部では、やはり低弦の印象的な主題を提示して、暖かな世界を連想させてくれる。フーガのようにくり返される主題の展開する世界は懐かしささえ感じさせてくれる。が、そんなつかの間の幸福はあっという間に去ってもとどおりの冬枯れ。あーあやんなっちゃうなもうと思いかけるのだが、ティンパニの動機をキーにして、世界はだんだん暗闇から抜け出してくる。転調が幾度となく繰り返され、そのまま4楽章に突入するのである。

第4楽章はそんな感じで第3楽章から突入してくるので、もう押せ押せムードである。なんだか知らないうちに「運命」に勝ってしまったのだ。そうなってしまえばこっちのもので、勝利の美酒を味わおうじゃないのということで、いままで押し黙っていたピッコロやらトロンボーンなんかも参加して凱歌を歌う。それでもチャイコフスキーのように混沌とした状態にならないのがベートーベンのうまいところで、どんなに盛り上がっていてもきちんとした質感で統制がとれているのだ。というわけであくまでも「大人の」雰囲気で勝利に終わった運命のドラマは終了。
あまりにも出だしがインパクトありすぎでどうしようもないのだが、おしまいは明るく終了するもの。これが、ベートーベンの考える方程式なのかも知れない。

演奏時間 : 約30分